料理の道で挫折。自分探ししてきたけど、演技に出会えて良かった(荒井啓仁)
2020/12/02 11:04
ライター:平田提
仕事 映画 自分探し インタビュー 俳優義務教育や仕事に必要なスキルだけじゃなく、大人になっても生活の中で学ぶことはたくさんあります。いつもNeverending schoolのpodcastで読書会や歴史の学び直しを一緒にしている、荒井啓仁(あらいけいと)くんに今回はお話を訊きました。 荒井くんとは某ゲームのオフ会で知り合い、もう10年近い付き合いです。けいとくんは以前料理の仕事をやっていたましたが、今は別の仕事をしながら俳優活動をしています。なぜ演技を学ぼうと思ったのか、演技を学んで良かったことは何か訊いてみました。
――演技について学ぼうと思ったのはなぜですか?
けいと:料理は最初にやりたいと思ったことだったんですけど、パワハラが多くてクビにされてしまって。料理の専門学校に通っているときは、チープな言い方かもしれませんが、夢に向かっている、何かを燃やすような感覚があったんです。料理店を辞めてからもそれをずっと探していたんです。6~8年ぐらい、自分探しというか……。それまで絵を描いてみたり、楽器のベースを買ったりいろいろしてみたんですけど。
――絵描いたりしてたねえ。
けいと:たまたまあるとき、僕の住んでいた市のお知らせで、市の主催で演技のワークショップ兼撮影があると。それで合うかなと参加してみたのが演技と出会った始まりです。そういや演技ってまったくやったことないなと。 人前に立つのは嫌いじゃないし、そのワークショップのご縁で映画のお手伝いなどをさせていただくうちに、「演技、面白いんじゃないか」と思うようになりました。ちょうどその前の仕事も飽きたというか、もういいかとなっていたんで辞めちゃえと。見切り発車が過ぎた形ではあるんですが。
――演技をやっていて活き活きしてていいなというのは傍から見ていて思うし、会ったときから声がハキハキしてるから向いてるんだろうなと。けいとくんは、ガチのオタクではありつつも、見た目はサーファー系というか、溌剌(はつらつ)としているでしょう?
けいと:ありがとうございます(笑)。
――舞台映えもしそうだし、演技はいい道だなと思った。演技を学んでいて面白いことって何ですか?
けいと:僕はまだまだ演技の、本当に浅瀬どころか、足首まで浸かったかぐらいんですよ。数々の大先輩にいわせると……という予防線は張らせていただくとして(笑)。演技を学んでいると、思ったより芝居をしないなと思うんですね、上手いの演技人を見ると。いきなり怒り出すとか、1秒で泣けるという演技ではなく、まさにそこにいるっていう感じ。思っていた以上に、人間性やその人の持ってるものが丸出しになるのがすごいなって思いますね。
――なるほど。
けいと:お芝居はつくるものではあるんですけど、その人が持ってきたもの全部、今までの人生経験や人間関係が全部出ちゃうんだなって。板に立つときは素でいなきゃいけないので、例えば何か言われたときのちょっとした反応とかにその人が出ちゃうんですよね。そういう色が出るのが面白いです。
――生でさらされちゃうんだね。心も含めて裸になって出ているような。
けいと:そうですね。演技で相手と深く関わるのは面白いです。演技レッスンに行くと普通(他の知り合い方)よりも仲良くなるのはやっぱりそういうことだと思うんです。芝居っていう、役のガワを被ってはいるんですけど、根っこにある人間性が見えてくるので仲良くなっちゃうんです。
・podcast版
――我々は社会生活を送る上で多少なりとも仮面を被ったり演技をしたりするじゃないですか。会社員だったら「部下の役」とか、駆け引きややりとりも含めて。だから日常にも演技ってあると思うんだけど、演劇を学んで日常生活で変わったことはありますか?
けいと:めちゃくちゃありますね。僕が通っていた演技スクールは「メソッド法」というやり方をやっていまして。自分の経験と結びつけていくというか、その役としてそこに存在するための、自己啓発っぽいレッスンが多いんです。今までの自分の経験を許していくとか、そういう過程で自分の内面の変化はすごいものがありました。あとは人と話すときに相手が分かるようになってきたというか、それは大きいのかな。深く知れるというか。
――会話の呼吸やリズムもありますか?
けいと:それもありますし、声色の変化とか表情とかも。
――読めるってこと?
けいと:読めるというとメンタリスト的なことになっちゃいますけど(笑)。
――(笑)。
けいと:相手の伝えようとしていることがより分かる感覚ですね。今までは言葉尻だけ捉えていたこともあったんですが、言葉に出るだけじゃない思いもあるよねっていうのが肌で理解できるようになった感じです。
――「メラビアンの法則」っていうのがありますもんね。人の心とか思いを判断するのに 言葉とかよりも、見た目やしぐさの情報が大事だっていう。
けいと:そういうのって、映画とかで知って「へーっ」て思ってんですけど、演技をして肌で感じるようになると全然違うんだなと思いました。
――ブレイディみかこさんの本『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の中にあったんだけど、イギリスは試験の中に演劇があるみたいなんですね。テストとか必須科目の中に。その理由が、演技をすることで相手のことを理解できたり寛容になれたりするという。虐待されていた子供の傾向として表情が少ない子が多いと。自分が喜怒哀楽の表情ができるってことは相手の表情を読めるっていうことみたいなんだよね。文字の読み書きとは違うリテラシーというか、演技の能力っていうのは、猫を被るとかじゃなく表情の作り方や読み取り方っていうのは人間に必要なコミュニケーション能力なんだなと思います。
けいと:僕が言いたいことをキレイにまとめていただいた感じで……。
けいと:ありがとうございます。僕自信も結構変わってきたなって思います。2年ぐらいですかね、演技学校通ったりし始めて。
――演技が合っているんだと思いますよ。
けいと:そうだといいなあと思います。いい意味で変わったよねってみんなが言ってくれるってことは食っていけるかどうかは別としても、他で仕事しつつお芝居続けていくのは良いなと思っています。
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平田提
Dai Hirata
株式会社TOGL代表取締役社長。Web編集者・ライター。秋田県生まれ、兵庫県在住。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業。ベネッセコーポレーション等数社でマーケティング・Webディレクション・編集に携わり、オウンドメディアの立ち上げ・改善やSEO戦略、インタビュー・執筆を経験。2021年に株式会社TOGLを設立。
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