『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』感想。改めて観て出た謎&お仕事アニメ感
2021/01/15 14:03
ライター:平田提
新世紀エヴァンゲリオン アニメ 映画 ブックフォービギナーズ新型コロナウイルスの影響で2021年1月23日予定だった『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』は公開延期になりましたが、それでもこの作品への期待は高まるばかりです。今回は95年のTV版以来『エヴァ』ファンの2人で『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』を改めて観てみると、謎の多さと「お仕事アニメ」感を感じました。
――『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』を改めて二人で観ましたね。『ヱヴァ序』は『新世紀エヴァンゲリオン』TV版の1~5話あたりにストーリーが近くて、シンジくんがエヴァに乗って日本の全力を集めてビームライフルで使徒を倒す、そして「笑えばいいと思うよ」って言う……話だよね。
栗原:かなりざっくり言うとそうだね(笑)。
――TV版や旧劇場版といろんな部分が違ってたよね。
栗原:見直しても結構忘れてるシーンが多かったな。冒頭の赤い海でまず混乱したね。いきなり違う世界観なんだよね。
――巨人が倒れた跡みたいなのもあったり。
栗原:死体現場、事件現場みたいな白テープしてるやつね。
――船が町に乗り出したり、世界崩壊している風景。
栗原:凄惨なことが起きたんだろうっていうのは分かるけど、詳細は分からない。
――TV版・旧劇場版だと秘密結社というか謎の組織「ゼーレ」と「ネルフ」のゲンドウが裏で人類補完計画を進めているって話だったけど……新劇場版だとそれが「リリスとの契約」と言われていてちょっと違うんだよね。
栗原:使徒が突然現れたというより、それすらも計画に織り込まれたというか。殲滅もリリスの契約の一部みたいなだったね。
――そのリリスという存在も、TV版でもネルフの施設ターミナルドグマの地下にいるんだけど、最初はアダムと思い込まされる、ミスリードがあったんだよね。それでアダム(リリス)と使徒が接触するとサードインパクトが起こってしまうから阻止しなきゃいけないってことでエヴァと使徒が戦うんだけど。新劇場版では初めから地下の巨人はリリスって呼ばれてて、ミサトさんもそれを知っていてシンジくんに教える。紫の仮面を被った他のリリスみたいなのも月にいるし、なんで複数なんだ、一番最初の使徒が第4使徒になってるぞ……ととにかく分からなかった。
栗原:分からなかったよね(笑)。カヲルくんの「君はまた三番目なんだね」みたいにシンジくんに言うセリフも、カヲルくんはすべて知ってるけど終わらせる役目なのかなとか、含みがとにかくある。
――カヲルくんが目覚めた月面に血がほとばしってるのは旧劇場版でそういう描写があったからなのかなって思ったんだけど、それで旧劇場版からのループが新劇場版なんじゃないかと思っちゃうよね。逆にそうじゃなかったらなんなんだっていう。『シン・エヴァンゲリオン』でどう終わらせるのかな。
栗原:本当に終わるのかっていう。終わるのは寂しいんだけど、できるうちに完結してほしい思いもあるね。
――期待値はめちゃくちゃ高まってるね。
関連記事:『新世紀エヴァンゲリオン』とは?新劇場版までのあらすじ・登場人物の目的
podcast版
――全体的にゲンドウがシナリオを仕組んでるっぽいんだけど、零号機の暴走の時にゲンドウが熱いハッチをこじあげるシーンを、ヤシマ作戦の最後シンジバージョンでもう1回やるじゃないですか。親子で同じ女性を、同じ方法で助ける。それでレイのゲンドウへの憧れの気持ちがシンジに向く。そこもゲンドウが仕組んでたとしたら「なんなんだこいつは」って(笑)。
栗原:そこまで仕組まれてたんだとしたらすごいよね。ビームも1発目外さないといけないしね。
――そうなのよ。そして「ヤシマ作戦」は、こっちのほうが庵野監督の後の作品だけど、映画『シン・ゴジラ』の「ヤシオリ作戦」を思い出すんだよね。
栗原:本当にそうなんだよね。
――こういうのが好きなんだな、やりたいんだなって思った。
栗原:日本中の総力を集めてぶつけるみたいなね。
――『シン・ゴジラ』でも『エヴァ』のBGM使ったり、自分の好きな表現をどんどんアップデートしていこうという思いがあるんだろうな。 『シン・ゴジラ』の体制批判というか、予算消化主義とか官僚主義とかの風刺は『エヴァ』にももともとあったと思うし、これまでのアニメの製作委員会方式とかへの皮肉もあるのかなあ。
栗原:そういうのもあるのかな。新劇場版は、庵野監督たちスタジオカラーとしては最初の作品だよね。やりたいことをやれる環境ではあった。
――そういう意味ではスタジオカラーならではというか、ローソンとかUCCコーヒーがそのまま映ってたよね。
栗原:キリンビールも。
――作中にそのまま商品を出す広告手法のプロダクト・プレイスメントなのかな。ミサトさんがヱビスビール飲むシーンはちょっと長いなってぐらい映ってた。
栗原:「何秒でいくら」とかあったんだろうか。
――テーマ的なことでいうと、冒頭、車で駆けつけたミサトさんがシンジくんに「何が起こってるのか聞かないの」って言ってシンジくんは「誰に聞いてもも答えてくれないから効聞きません」って言うんだよね。そんなシンジくんに、ゲンドウやミサトさんたちは「自分で決めなさい」って言っう。「自分で決める」っていうのは『エヴァ』のテーマというか、大人になるってことだよね。しかし見返すと、改めて「大人がひどいな」って思う(笑)。
栗原:そうだね(笑)。
――14歳の少年、自我がぐらつくそんな時期に急に呼びつけてロボットみたいなのにわけも分からず乗れという。ミサトさんがプレッシャーかけるんだよね。全日本の電力、世界の命運を君に預けたわみたいなことを言う。この世で最上級のプレッシャー。外したら世界崩壊っていう……。
栗原:いま見返すと、大人の「突き放し感」がすごいよね。映画版にもとの話を縮めてるからもあると思うけど。「あなたが決めなさい」「自分で決めたからここにいるんでしょ。できないんだったら帰りなさい」とか。すねてみても誰も引き止めてくれない(笑)。ご機嫌を誰かがとってくれる世界じゃないんだよって。生きるのが厳しい世界なんだよ、世界自体が厳しい場所なんだよって、突きつけてくる。
――お笑い芸人のみやぞんが「自分の機嫌は自分でとる」って言ってたけど、『ヱヴァ序』はみやぞんの言葉に集約されるかもしれない……。
栗原:まとめるとそうかな(笑)。一方で大人たちは「世の中こんなもんだから強く生きろ」って伝えている気もするし。「嫌なことから逃げるな」っていうのは繰り返し出てくるよね。
――ある意味ゲンドウの突き放しスタイルは、頑固親父の「お前がやれ」っていう導き方でもあるんだろうからね。
栗原:シンジくんがゲンドウに認められる=社会に認められるってことだしね。
――そのためにシンジくんはエヴァに乗るんだもんね。だから『エヴァ』はお仕事アニメかもしれないって思った。高校・大学で学んだことが役に立たない環境に入って、マニュアルもない。そんな中で自分で判断しろって言われる。シンジくんは若くして大人と同じ仕事の現場に入ったわけで。『エヴァ』には仕事をしていく過程を観るような気がしましたね。
平田提
Dai Hirata
株式会社TOGL代表取締役社長。Web編集者・ライター。秋田県生まれ、兵庫県在住。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業。ベネッセコーポレーション等数社でマーケティング・Webディレクション・編集に携わり、オウンドメディアの立ち上げ・改善やSEO戦略、インタビュー・執筆を経験。2021年に株式会社TOGLを設立。
Neverending schoolへの広告掲載などのご連絡はこちらから。
お仕事の依頼、実績確認などはこちらから。
株式会社TOGL Webサイト