困っている人の役に立つ仕事のアイデア。保留コーヒー、ストリートディベーター
2020/09/28 18:09
ライター:平田提
ウェルビーイング アイデア 仕事 自己啓発困ってる人の役に立つ仕事っていろいろあると思うんです。ほとんどの仕事は誰かの役に立っていると思うんですよ。『投資家が「お金」よりも大切にしていること』っていう本があって、その中にすごくいいことが書いてありました。例えば赤ちゃんでも、働いていなくても人は誰かの役に立っているって。
・音声版(podcast)
“赤ちゃんは自分では何もできないし、もちろん1円も稼ぐことはできませんが、立派な経済主体です。なぜなら、赤ちゃんがいることによって成り立っている会社や産業がたくさんあるからです。(中略)それは、赤ちゃんだけではなく、大人でも同じことです。私たちが存在するだけで、経済は動いているのです”(藤野英人『投資家が「お金」よりも大切にしていること』星海社新書/82~84頁)
例えば赤ちゃんはオムツを毎日使う。それを買うのは両親であったり、おばあちゃん、おじいちゃんだったりするんですけど、そこで消費が生まれる。オムツメーカーの人はその利益を得られて、そこで経済が回る。 引きこもりの人だとしても、何らかの消費はしてるわけですよね。パソコンを使っていたりインターネット回線繋いでいたり、その契約料金とか利用料とか。あとは日々の洗濯だったりご飯を食べたり、本人が払ってなかったとしても誰かが支払って、お金が回っていたりするわけで。 寄付にしたってそうですし、税金を払うことだって立派な他者貢献だと思うんです。そういう風に、仕事じゃなくても人は困ってる人に、誰かの役に立ってるってことはあるのかなあと思います。
仕事って基本的に誰かのためにやることだと思うんですけれど、1つのアイデアとしてすごくいいなって思ったのが Netflix の『カフェ・ソスペーゾ ~優しさがつなぐ一杯~』って番組で知った「保留コーヒー」の文化。イタリアのナポリから始まって世界に広がった文化のようなんですけど。
Netflix 『カフェ・ソスペーゾ ~優しさがつなぐ一杯~』
保留コーヒーが何かっていうと、誰かがコーヒーを注文するときにもう一杯分あらかじめ払っておくんですね。そうすると、次に来た人がお金を持ってなかったとしても保留コーヒーの枠があると、その中から無料で飲むことができるというもの。ホームレスの人とかまたまたまお金がない人でも、温かいコーヒーをその時に飲めるんです。
これはすごく優しい文化だなと思ったんです。すごく簡単なアイデアなんですけど、すごいソーシャルデザインだなと思って。イギリスのスターバックスとかもこの文化を導入し始めたらしいです。誰かからは分からなくても善意を送ってもらえるっていうのは、もらった人はとても嬉しいことだと思います。
もう一つ、困っている人の役に立つソーシャルデザインとしてすごいなと思ったのは、2017年の『WIRED』「Creative hack Award」を受賞した木原共さんという日本人の方が発明したストリートディベーター。これはホームレスの人たちを救い、人と話す機会や雇用を得る機会を与えるような仕組み。ホームレスが「お金を入れて下さい」ってボックスを置いていたりするんですけど、その代わりに秤(ハカリ)、バランスですね、あの重りを乗せたらどっちかに沈む秤をホームレスの方に配ると。例えば当時だといわゆるブレグジット、イギリスのEU 脱退に賛成/反対かを秤の両方に書いておく。街行く人は賛成/反対どちらかにお金を置いていく。
Street Debater/JP from Tomo Kihara on Vimeo.
CREATIVE HACK AWARD 2017受賞作品、決定!──それは「人間の条件」を問い直す営為
そうするとどちらかに秤は沈むわけですよね。見た目としてどちらが優勢かがパッと分かりやすいし、もし賛成派が勝っていたとしたら反対派の人は反対票を増やしたいと思ってお金置くかもしれない。ホームレスの人にお金を置く機会が生まれやすいし、みんなが共有できるテーマがあると自然と話が生まれるので、ホームレスの人たちに話す機会が生まれる。そこが素晴らしい。話す機会があると、どうしてホームレスになったのか、みたいな話をそのブレグジットの話とかの後に始めたりするんですね。
『WIRED』の記事や動画でも紹介をされていたんですけど、対話が生まれていくと雇用に繋がったりもするし、ストリートディベーターっていう仕組みでも稼ぎを得ることができる。参加する方もただお金を恵んでいるだけじゃなくて、お金を置くことがエンターテーメントにもなっている。両方にとって良いサービスになっている。
ストリートディベーターは仕組みとしてはすごく簡単なんですけど、ただここに行き着くまでにコンセプトを整理する過程や作業がものすごくあったんだろうなぁと想像できます。保留コーヒーも同じで、仕組み自体は簡単なんですけど、とても優しく人を救うデザインになっている。 中国のことわざにこんなものがあります。
“1時間幸せになりたかったら、昼寝をしなさい。 1日幸せになりたかったら、釣りに行きなさい。 1年間幸せになりたかったから、財産を増やしなさい。 一生幸せになりたかったら、人の手助けをしなさい。”
『リュッケ 人生を豊かにする「6つの宝物」』(著:マイク・ヴァイキング、訳: アーヴィン 香苗 /三笠書房/240ページ)
最後の「一生幸せになりたかったら人の手助けをしなさい」っていうのがやっぱり人には必要なんだなあと思いました 。
平田提
Dai Hirata
株式会社TOGL代表取締役社長。Web編集者・ライター。秋田県生まれ、兵庫県在住。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業。ベネッセコーポレーション等数社でマーケティング・Webディレクション・編集に携わり、オウンドメディアの立ち上げ・改善やSEO戦略、インタビュー・執筆を経験。2021年に株式会社TOGLを設立。
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