三権分立とは?立法権・行政権・司法権の意味や目的、歴史を解説

2020/11/10 21:55

ライター:平田提

政治 哲学 歴史
三権分立とは?立法権・行政権・司法権の意味や目的、歴史を解説

三権分立とは国の権力を「立法権」「行政権」「司法権」の3つに分け、別々の機関に役割分担させることです。権力を分散させ、1人の権力者、1つの組織・機関に権力が集中しないようにしているのです。 例えば日本では、このように分かれています。

  • 立法権……国会
  • 行政権……内閣
  • 司法権……裁判所

三権分立の立法権・行政権・司法権の意味と目的とは

3つの権利はそれぞれ読んで字の如く、こういった意味があります。

  • 立法権=法律を立てる権利
  • 行政権=政治を行う権利
  • 司法権=法律を司る権利

「立『法』」「司『法』」と「法」が入っているのは、国の決定や判断がすべて法律に基づくことになっているためです(こういう国の体制を「法治国家(ほうちこっか)」といいます)。

  • 個人情報などの人権の範囲
  • 罪を犯した人の処罰法
  • 何に対してどれだけのお金を使えるか・もらえるか・取るかという予算・保障・税金
  • 緊急事態に自衛隊をどこまで投入できるかの基準

こういった決定・判断の基準が日本を含む民主主義国家ではすべて法律で定められています。

権力を1箇所に集中させてしまうと、万が一その権力者が暴走したとき、戦争や独裁など大変な事態を招いてしまいます。そのため、3つの権力を分けることで互いにチェックし合う仕組みになっているのです。これを「チェックアンドバランス」とも呼びます。

三権分立の歴史とは。モンテスキューが確立、米独立戦争以降に制度化

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権力分立の考え方はイギリスの哲学者、ジョン・ロックが『統治二論』の中で、立法権と執行(行政)権の分立をまず説きました。この時点では司法権は執行権の中にありましたが、17~18世紀のフランスの哲学者・モンテスキューが立法権・行政権・司法権の三権分立の考えを確立させました。 ロックやモンテスキューより前、11~12世紀のヨーロッパは領主と農民の身分がはっきりしていました。その後「絶対王政(ぜったいおうせい)」と呼ばれる、絶対的な君主による国家の統一・支配が進んでいきます。「国王の権力は神によって授けられたもので、絶対不可侵(侵害されないもの)だ」という王権神授説(おうけんしんじゅせつ)が、支配する側の根拠にありました。 17世紀に入り、商工業の発展で経済的実力をつけた市民階級(ブルジョアジー)が台頭してくると、ブルジョアは労働者や農民を味方につけ、イギリスの清教徒革命(1642)・名誉革命(1688)など独裁体制に対して革命を起こすようになりました。

アメリカ独立宣言は、ロックやモンテスキューの思想の影響を受け、三権分立をうたっています

イギリスの支配に抵抗したアメリカ独立戦争(1776)のあと出されたアメリカ独立宣言は、ロックやモンテスキューの思想の影響を受け、三権分立をうたっています。 この考え方はアメリカ独立戦争後につくられた世界初の憲法「バージニア憲法」、アメリカ合衆国憲法につながります。アメリカ独立戦争はフランス革命(1789)にも影響を与え、三権分立を基本とした憲法・法律、その他の制度も他の国へ広まっていくことになりました。

日本の三権分立の歴史とは。二次大戦後の日本国憲法で明文化

憲法は国の最高法規(ルール)です。基本的人権の保障や国を治める仕組み、政治権力による暴走の防止・制限・抑制をするルールがあります。日本では明治維新(1868年)のあと、国会制定や憲法制定を要求する自由民権運動が起こりました。その後、プロイセン公国(現在のドイツ~オーストリア一部にあった国)憲法を参考に、大日本帝国憲法の案がつくられ、1889年に発布されました。

大日本帝国憲法での三権分立(明治~第二次世界大前まで)

大日本帝国憲法の時点で、形式的には三権分立が盛り込まれていました。ただし天皇が日本の統治権を「総攬(そうらん、一手に集約すること)」することになっていました。法律とは違うものの、天皇は緊急勅令(ちょくれい)という強い命令を出すことができたのです。陸海空軍の統帥(とうすい)権、指揮権も天皇にありました。これが軍部が議会ではなく天皇に直接確認して軍を動かす暴走を招き、太平洋戦争などにつながっていきました。

日本国憲法での三権分立(第二次大戦後)

日本国憲法での三権分立(第二次大戦後)

第二次大戦の敗戦を経てつくられた日本国憲法(1946)では天皇は国の象徴となり、国会・内閣・裁判所による三権分立が明文化されています。

日本国憲法41条に「国会は国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である」とあります。三権分立を否定するものではありませんが「国民主権」の原理から、国民が選んだ議員による国会が国権の最高機関とされています。

※主権……国家の最高の意思で、国を統治する最高の力のこと。

1.三権分立の「立法権」を持つ国会とは

三権分立の「立法権」を持つ国会とは

国会は「立法権」を持つ機関です。主権者である国民に直接選出された議員が、国民の権利・義務に関するルールをつくるため、日々審議(話し合い)をしています。犯罪を犯したときの刑罰、行政機関をどう置きどんな権利を持たせるかも法律によって定められます。どれだけ国民から税金をとり、それをどう運用するかといった、予算の議決権も国会にあります。 立法の大元には憲法があります。憲法改正には各議員の総議員の3分の2以上の賛成、国民投票で過半数以上の賛成が必要になります。

国会の構成。公平な議論のために衆議院・参議院の二院制に

国会は衆議院・参議院の二院制で、議員は選挙で選ばれます。

  • 衆議院……任期4年、475名、解散有り
  • 参議院……任期6年、242名、解散無し(ただし3年ごとに半数を改選)

二院制が採用されているのは、世論を公平に反映し、慎重な審議を行うためです。また解散総選挙や何らかの事態で衆議院が機能しない場合にも参議院が議論を行えるようになっています。 内閣不信任決議権、予算の先議権は衆議院にしか認められていません。予算や条約締結、内閣総理大臣の指名などで衆議院・参議院の意見が異なる場合、衆議院の決定が優先されます。

国会が内閣に行えること

内閣総理大臣の氏名(天皇が任命)、衆議院の内閣不信任決議案の可決・信任案の否決、国務大臣の議院出席要求、内閣作成の予算案の審議・議決、内閣締結の条約の審議・承認など

国会が裁判所に行えること

裁判官の適格性の有無を審判する、弾劾裁判所の設置権。

2.三権分立の「行政権」を持つ内閣とは

日本国憲法65条で、行政権は内閣に属すると定められています。内閣は内閣総理大臣が主催する閣議(かくぎ)で行政権を実行します。慣行として閣議の全員一致で決定がなされます。

内閣は内閣総理大臣をトップとし、その他の国務大臣から構成されます。内閣総理大臣は国会が指名し、国務大臣は内閣総理大臣によって任免されます。内閣総理大臣大臣は文民(軍人以外)でないといけません。実際には、内閣総理大臣は国会の多数で占められる政党の党首、連立与党の最大勢力の代表が務めるケースがほとんどです。

内閣の下に内閣府・総務省・法務省・外務省・財務省などの行政機関、省庁が属します。国務大臣は内閣の職務と連携して、各省庁の大臣として行政を担当します。

基本的に日本の内閣は以下のような権利を持っています。

  • 法律の施行
  • 外交関係の処理
  • 条約の締結
  • 予算の作成
  • 政令(内閣が制定する命令)の指定
  • 臨時国会召集の決定権
  • 天皇の国事行為への助言と承認
  • 最高裁判所長官の指名

内閣総理大臣の権利は以下のようなものです。

  • 内閣を代表して議案を国会に提出
  • 外交関係や国務について国会に報告
  • 国務大臣を任命・罷免(辞めさせる)
  • 自衛隊の最高指揮権、防衛出動命令
  • 緊急事態の布告など

衆議院が内閣不信任案を可決、または内閣信任案を否決した場合、10日以内に衆議院が解散しない限り内閣総辞職をしなければなりません。解散後は40日以内に衆議院議員総選挙、その日から30日以内に特別国会を招集する必要があります。

内閣が国会に行えること

国会・臨時国会の召集、衆議院の解散・衆議院選挙施行の公示など

内閣が裁判所に行えること

最高裁判所長官の指名(天皇が任命)、最高裁判所裁判官・下級裁判所裁判官の任命など

3.三権分立の「司法権」を持つ裁判所とは

三権分立の「司法権」を持つ裁判所とは

司法権を持つのが裁判所。裁判所の役割は、社会の紛争を法律に基づいて裁判し、解決すること。国民の権利や自由を守りながら、公正中立に法律を解釈して判断し、秩序を保つことが求められます。 「裁判所が拘束されるのは憲法と法律のみ」と憲法76条にあり、司法はどこからも指図をされません。また裁判官の独立を保障するため、身分が守られています。心身の不調が理由で仕事ができないとき、国会が開いた弾劾裁判所で辞めさせられるとき以外は、罷免されることはありません。

裁判所には以下のような種類があります。

  • 最高裁判所
  • 下級裁判所
    • 高等裁判所
    • 地方裁判所
    • 簡易裁判所
    • 家庭裁判所

最高裁判所は長官と裁判官14名の15名で構成され、長官は内閣が指名し天皇が任命します。

裁判所が内閣・国会に行えること

国会が制定した法律、内閣の定めた命令・規則・処分の違憲・合憲(憲法に合っているか)の審査を行う違憲立法審査権

三権分立・権力分立は民主主義国家のベースにある考え方

アメリカや、イギリス・ドイツ・フランスなどのヨーロッパ諸国や韓国など資本主義国家では、大統領制・議院内閣制、その両方を兼ねた制度が多く採用されています。ロシアや中国などの社会主義国家では一党支配の権力(民主)集中制をとっています。アメリカの大統領は法案提出権はないが絶大な権力を持っていたり、イギリスは王を中心とした立憲君主制(りっけんくんしゅせい)でありながら実際の統治は議院が中心だったり……と国によって権力のバランスの考え方はさまざまです。日本では国民に主権があり、国民が選んだ議員による国会(立法)での話し合いで立法がなされています。一方で内閣(行政)の閣議決定がどこまで許されるのか、最高裁判所(司法)の違憲判断がどう活かされるのかなどについては常に議論があります。もともと三権分立の考え方が生まれた背景には、1箇所に権力が集中して暴走した歴史への反省がありました。チェックアンドバランスが常に働いているかどうかは、平和が続くベースにあるともいえるでしょう。

参考文献

  • 藤井剛『第3版 詳説 政治・経済研究』(山川出版社)
  • 山崎広明・編『新版 もういちど読む山川政治経済』(山川出版社) ほか
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平田提
Dai Hirata

株式会社TOGL代表取締役社長。Web編集者・ライター。秋田県生まれ、兵庫県在住。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業。ベネッセコーポレーション等数社でマーケティング・Webディレクション・編集に携わり、オウンドメディアの立ち上げ・改善やSEO戦略、インタビュー・執筆を経験。2021年に株式会社TOGLを設立。

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